Laetitia LOMBARDO
1区:ルーブル美術館 ルーブル美術館のピラミッドと《モナ・リザ》、また古代エジプトを参考にしたクレオパトラ、ハヤブサが描かれている。中央の女性の衣装は作家の好きなリシュリュー枢機卿とルイ13世からインスピレーションを得たもの。右上には現代作家ビュランの円柱も見つけることができる
2区:パッサージュ・デ・パノラマ 1800年につくられたパッサージュ・デ・パノラマ(アーケード街)を舞台に、中央に立つ女性は、近くの証券取引所と貨幣博物館から発想を得ている。右下には『ポー・ダンヌ』のロバも描かれ、現代の消費社会とそこからの自由を題材にしている。
3区:人形博物館 人形博物館を参考にした作品。さまざまな国とさまざまな時代の人形が住む人形の家を描いている。なかには子どもの頃作家が熱中した人形も登場する。
4区:シテ島の花市と鳥市 1900年に作られた2つの市場がテーマ。女性は花模様のドレスと、今まさに鳥が自由に羽ばたいていく鳥かごを身につけている。彼女の頭上にはノートルダム寺院が、また左上にはヴェール・ギャラン公園の藤が描かれている。
5区:サンテティエンヌ・デュ・モン教会 左側には花嫁姿の女性、右側にはクルニュー中世美術館をイメージした女性を描いている。背景にあるトゥールネル橋はパリの守護聖人である聖ジュヌヴィエーヴの聖遺物箱を教会に運んだ橋といわれている。
6区:ラデュレ サンジェルマン・デ・プレ教会を象徴するステンドグラスの前にコック帽を被った女性、またラデュレのお菓子ルリジューズやマカロン、そしてネスレ塔が描かれている。ネスレ塔は現在存在しないが、パリに城壁があった頃の古い塔の一つ。右上にはパリ市の紋章の一つも描かれる
7区:エッフェル塔 エッフェル塔(1889年)とオルセー美術館(1900年)がテーマ。左の女性はミレーの《落ち穂拾い》を、右側の女性は20世紀初頭のファッションをイメージしている。2人はエッフェル塔にフランスやパリを代表するあらゆるものを積み重ねていく。
8区:エトワール凱旋門 シャンゼリゼ大通りにあるエトワール凱旋門とラデュレ、マリアージュ、フォーション、ダロワイユ、ガレー、クリヨン・・などのサロン・ド・テをテーマにした作品。樹木や湖などの自然は、昔フランス王の狩猟場だったブローニュの森を思わせる。
9区:オペラ座 『オペラ座の怪人』に代表される多くの伝説にいろどられるオペラ座がテーマ。『オペラ座の怪人』では地下に沢山の魚で溢れる大きな池があり怪人はそれを食べていたという。左側にはドレスの内側に魚をしのばせた怪人を右側には練習生のダンサーが描かれている。
10区:東駅と北駅 フランス地方との窓口でもある大きな駅二つを題材にしている。機関車の煙からは女性が現れ、右下には駅のシンボルである時計、また背後にはサン・マルタン運河にかかる橋も描かれている。
11区:冬のサーカス サーカス小屋の前でポーズをとる空中ブランコ乗りと軽業師が描かれる。彼女たちの身につける毛皮は冬の厳しい寒さを想像させるが、一方で熱気、軽やかさ、エレガントさなども感じとれ、そのような女性らしさへの讃歌が込められている。
12区:ラ・クレ・ヴェルト この区にあるアール・ヌーヴォー様式の建物や熱帯水族館、アフリカ美術館から発想を得た作品。女性2人のポーズや魚や虫にその特徴が表れる。背景にはラ・クレ・ヴェルトとよばれる高架橋上の線路跡につくられた散歩道があり、高架橋の下にはギャラリーや工房が軒を連ねている。
13区:ビュット=オ=カイユのプール 1920年に建設されたパリで最も古いプールの一つを舞台に死の魅惑のシンボルであるセイレーンとles années folles(狂気の年々)のファッションに身を包んだ女性が描かれている。このプールはアール・ヌーヴォー様式のすばらしい建築でも有名。
14区:モンスリ公園 植物をイメージした緑色、空をイメージさせる青色、枢機卿の色を思い起こさせる赤色の衣装を身につけた3人の女の子が描かれている。彼女らはそれぞれ、花が咲き乱れ鳥が憩うモンスリ公園、気象台、そしてモンパルナス墓地を表している。
15区:ポルト・ドゥ・ヴェルサイユ 鍵を渡し合っている2人、左のブルターニュ女公アンヌと右のマリー・アントワネットを描いている。アンヌは他の区よりもこの区に多く住むブルトン人の象徴として、マリー・アントワネットは15区の外側に広がるヴェルサイユ宮殿のシンボルとして登場している。
16区:ガリエラ パリのモードを展示するガリエラ美術館をテーマにした作品。ポーズをとる2人の女性は現代と古くからあるモードの2つを表している。床に広がるバラはバガデル公園というマリー・アントワネットとアトトア??伯爵の賭けによって作られた公園を思い起こさせる。
17区:ラ・シテ・デ・フルール さまざまな建物と花に溢れるパッサージュを歩く女性はBCBG(上品でおしゃれ)ないでたちをしている。ラ・シテ・デ・フルールは、1847年に作られたプライベートパッサージュで夜になると鍵が閉められるため、彼女は鍵を持ち歩いている。
18区:モンマルトルの丘 モンマルトルの丘をテーマにした作品。ムーランルージュとその踊り子、944年から実在するワイン農園とワイン、トレイにサクレ・クール寺院を載せたカフェで働く女性などが描かれている。
19区:ビュット・ショーモン公園 ロマンティックな雰囲気から別名「愛の寺院」と呼ばれる「巫女の神殿」を中心に、愛の寓意である天使やいくつものハートが描かれている。
20区:ペール・ラシェーズ墓地 著名な人も多く眠る墓地を舞台に、中世をイメージした女性とモリエールを参考にした17世紀の才女の彫像の2人を描いている。彫像は実際にこの墓地にあるものでレティシアが好む作家の1人でもある。
“Paris et ses arrondissements”
パリ20区シリーズ
パリを構成する20の区(arrondissement)をテーマにしたシリーズ。各区を特徴づけるモニュメントやモチーフを取りあげてそこから発想し、さらに歴史や文化へとイメージを膨らませて制作された物語あふれる20の作品。20の区が渦を巻いて配置されていることから象徴とされるカタツムリも各作品のどこかに隠されている。
mi-teinteにフェルトペン 30×21cm